手に持っていた袋とレシートを取っていく感覚に気づいて慌てて前を向くと、男もやはりその少女に何か思う節があるらしく、更に眉間に皺を寄せていた。
「ベッドで待っていろと言った筈だが」
咎めるような口調とは裏腹に、その声色はいつも聞く厳しそうな低い声とは違い、チェロを思い起こさせる優しい声だった。
「いいじゃん、どうせ明日は休みだし。それに、その、待ちきれな、く、て……」
赤くなった顔を隠すように俯いたせいで少女には見えていなかったようだが、俺は俯いた瞬間男が少しだけ口角上げたのを見逃さなかった。男は、少女の顔の前に垂れた長い赤毛を摘まむようにして持ち上げると、赤いカーテンの中へ顔を埋めた。
「……ばか」
静かな店内に、小さな罵りが響く。
どうやら男が何か囁いたらしいが、俺には何も聞こえなかった。ただ、分かったことが一つだけある。
「ありがとうございましたー……」
少女の華奢な肩に腕を回して寄せた男と、さっき買ったばかりの羊羮とコンドームが入った袋を持って出ていく少女の背中を見ながら、俺は息を吐いた。
幾つになっても、モテる男はモテるなんて、不公平な世間である。