最後の仕事だったからか。
「な、なに……?」
“タジマ”は、目の前の死体から目を逸らし、路地と大通りの間に立つ少女を見た。部活帰りなのだろうか、逆光で黒いコートとプリーツスカートがよく見えた。今まで暗い場所にいたせいだろうか、橙色の瞳が眩しく見える。ふぅ、と出た小さな息が白く消えた。
ボロが出て捕まってしまう前に、この仕事を引退しようと決めてから引退できるまで数年掛かった。今、ここで捕まってしまったら何もかもが泡となる。
“タジマ”はゆっくりとナイフをコートの内ポケットに入れた。
「気にするな。只の仕事だ」
だから、帰れ。
遠回しに伝わったのか、ゆっくりと少女の足が下がっていく。
しかし、少女は去らなかった。
「……なんの、仕事ですか」
「聞いてどうする」
「……いえ」
ただ、と震える唇が動く。
「なんだか、貴方が寂しそうで」
「変な奴だな」
「良く言われます」
肩に掛けたスクールバッグの持ち手を握る手も、すらりと伸びた足も震えているのに、何故か少女は逃げなかった。その理由に笑えなかった俺も、変な奴に見えているのだろうか。
人生最後の裏仕事の日、俺は年下の、将来の妻と出会った。