大通りに出て、路地から数メートル離れると、“タジマ”は少女の肩から手を離し、隣に立った。人が多いせいか、黒のコートを着た老人と制服姿の少女が横に並んで一緒に歩いていても不審がる者は誰もいない。
――家に帰ったら、すぐに通報しよう。
立香は心の中で強く頷いた。最初に見た時、その横顔が寂しそうでつい声を掛けてしまったが、相手は殺し屋なのだ。そう言えば、男の顔がどんなだったのかちゃんと見ていない。隣の男をちらり、と見ると金の瞳とかち合った。慌てて前を向いたからか、特に何も言われなかった。雑音に紛れるクリスマスソングに、もう年末か、とどうでもいいことを考えてしまう。クリスマスも近いのに、彼氏でもなんでもない初対面の男と一緒に歩いている。
立香の足が止まった。
「どうした」
「どうして、貴方と一緒に歩いているんですか」
ふっ、と男の口角が上がった。
「ばれたか」
「……そんな顔もするんですね」
「笑ったのは久方ぶりだ」
男の顔がまた険しくなる。
「来い。私の馴染みの喫茶店で温かい飲み物を奢ってやる」
罠かもしれない、と警告する理性とは反対に、もっと一緒にいたいとどこかが叫ぶ。
「……はい」