やはり擽ったいのか、少女の体は小刻みに震えている。それでも手を払おうとする素振りは見せないので、もう少し好きに撫でておくことにした。
「そう言えば、お前の名を聞いていなかったな」
「あ、貴方だって言ってないじゃないですかっ……!」
不満げに上目遣いで此方を見るものの、まだ顔は赤いままだ。
(まるで、愛撫を受けているみたいな顔だな)
そう思ってしまったのが、いけなかった。
理性が止める間もなく、ずくり、と下腹部に熱が集まっていくのが手に取るように分かる。どうして、こんな平凡な少女に惹かれてしまうのか分からぬまま、欲だけが集まっていく。
「裏に生きる者たちからはタジマ、と呼ばれている」
裏の世界では本名は用いないのが暗黙のルールだ。“タジマ”の場合、あまり真剣に考えずに初めての仕事の標的の名前から取った。あれから数十年経った今では、裏の世界で本名を知る者は一人もいない。
「……フジマル、リツカ」
「漢字は」
「藤の花の藤に丸いの丸、香りが立つと書いて立香」
「立香……良い名だ」
りつか、と口の中で転がせば、甘い香りがした。
「貴方は本名じゃないんでしょ」
「閨の中なら教えられるがな」