立香は息を呑んだ。目の前の男はいたく真面目な顔をしているが、本気に見せ掛けた冗談だってありうる。この人なら良いって思うんじゃなかった、と立香は心の中で叫んだ。そう思わなかったら、こんなに心臓を早くすることもなかったのに。
(ここはひとまず、聞かなかったことにして話を逸らせよう)
「家事手伝いになろうとする子を口説くのが趣味ですか」
「気になった者を己の近くへ引き寄せたい、とは思うがそんな趣味は無いな」
結局、立香の顔が更に赤くなっただけだった。
(そっちがこう来るなら、質問を畳み掛けてみよう)
「給料は」
「月20万」
「生活費や家賃は」
「私の家だ。気にするな」
「平日の半日以上は学校ですけど、休日は」
「平日と土曜日は働いて貰うが、日曜日と祝日は休め。休日分の家事は私がする」
「特別休暇とか長期休暇は無いんですね」
「取りたいと思ったら私に言ってくれ」
「平日も働くってことは、学校を辞めろってことですか」
「学生の本分は勉学だ。勉学に差し障りの無い程度で働いてくれ」
「ボーナスって無いですよね」
「年末年始や連休時に働いたら、働いた分に応じて出すつもりだ」
「恋愛は」
「自由だ」