「その気になる相手とやらに抱いている気持ちが分からないのか」
こくり、と伏せたまま頷けば、耳朶を弄んでいた手が頭へと移った。
「奇遇だな。私も今似たような感情を抱いている相手がいるのだが」
「……誰ですか、それ」
私なのかな、と立香の頭の中に淡い期待が浮かぶ。何故自分という返答を待っているのか、それも分からなかったが。
「誰だと思う」
ゆっくりと、頭を撫でられる。
ずるい、と立香が唸れば上からはて、何のことだかとすっとぼけた声が返ってきた。きっと、黄色の瞳を細めて面白げに此方を見下ろしているのだろう。
「……っ」
タジマ、と名乗った男の顔を思い浮かべただけで、胸の鼓動が早くなる。体の奥から熱が飛び出して、頭の先から足の先まで熱くなっていく。
「立香はどう思う」
ずるい。本当にずるい。
名前を下の方で呼ばれて嬉しいと思ってしまう自分の浅ましさに、立香は身悶えた。地団駄を踏みたいのを我慢する代わりに、両手を頭へと持っていく。丁度頭の中央に置かれていた目当ての物を掴むと、そのままそれを持ち上げてがばりと身を起こした。
(こうなったら、やけくそだ!)
「わ、私だと思いますっ!!」