簡易照明の薄明かりの中でもその痕ははっきりと窺える。わずかにひりつくそこをなぞると、思わず溜息が漏れた。「——腰が、痛むか」声のする方へちらりと視線を向けると、溜息の元凶であるその人はいつの間にか寝衣をゆるくまとって悠々と煙管を蒸している。そこそこ見慣れてはいるが、その何とも艶っぽい姿に毎回見惚れていることは内緒である。…どうせバレているのだろうけど。ともすればうっとりと見つめようとしてしまう眼に力を入れてじとり、と見据える。掛けられた労いの声には、確かに労わる気持ちがあるだろうがけど、同時に、どうしようもなく——からかうような響きも含んでいた、から。「痛いのも、そうだけど。」視線を落とすと、執拗なまでの鮮やかさがいやでも目に入る。「——手の、痕が」腰にはくっきりと、散々私を穿って揺さぶった手の痕が残されていた。「あァ…ちと加減を誤った」ゆるせ、とと言いながらもどこか愉しそうに煙を吐き出した口元を歪めているのだから性質が悪い。ゆるりゆるりと、慰めるように痕を残したその手で腰を撫で摩ってゆく。