私はお風呂が大好きだ。
湯船に浸かると忙しい日々から解放され、至福の時間に文字通り浸ることができる。一人、湯の中でいるとまるで何もかもが洗われていくような気分になっていく。風呂は心の洗濯、なんて言うのも納得だ。
更に、入浴剤。これがあれば全国各地の名湯が堪能できる。父親が物心つく前に亡くなって、母親も病死してからの独り暮らしの時は、よく日本の名湯シリーズの入浴剤を使っていたっけ。炭酸入りの入浴剤も実用性があるけど、名湯シリーズの入浴剤を使うと旅行に行った気分になって、侘しさも紛れた。
でも、最近になってから二人でのお風呂も良いことに気づいてしまった。
「クリスマスプレゼントがこれでは不満か?」
がぶり、とうなじを噛まれて思わず情けない声が出る。
「ううん、嬉しいよ。日本の名湯が再現できる入浴剤は久しぶりだし、これも高級品でしょ? ありがとう、柳生さん」
プレゼントの感謝を込めて、改めて彼のことを名字で呼んでみたが、なぜだか恥ずかしい。普通だったら名前の方が恥ずかしいはずなのに、いつの間にか慣れてしまったらしい。
「……名字で呼ぶな」
唸るような声と共に硬いモノがお尻に当たった。