出会ってから一年半、俺はいつも彼女に驚かされてきた。驚かせても、予想外の反応に此方が驚かされてしまう。手綱を握っているつもりが、気づけば手綱を自ら離して彼女と共にその身を流されるがままに任していることも何度かあった。それでも、嫌な気はしない。むしろもっと、彼女と共にいたいと、これから先の人生を共に歩みたいと思うようになった。まあ、そんなことは彼女には言ってやらないが。言ったら一日中ずっと変な笑みを浮かべながら、俺を見つめるのが目に見えている。でも、いつか言いたいとも思ってしまうのだから、俺も大分彼女に惚れてしまったものだ。
そう思って微笑んでしまうほどに俺は、彼女にこの先の人生を渡そうと思ってしまった。
だから、眠る彼女から左手の薬指のサイズをこっそりと計った。だから、頭の固い上司たちを有能な部下たちの後ろ楯をもって説き伏せ、1週間の長期休暇と知る人のみぞ知る隠れた名湯がある旅館の宿泊予約を取った。だから、俺の分だけが記入済みの婚姻届を準備した。
「楽しみだね、宗矩さん」
「ああ」
ああ、早くお前に指輪を渡してやりたい。
そう思いながら俺は、彼女のうなじに顔を埋めた。