二人分の足音が消えた。
急に止まったせいか、立香の目はますます疑問で輝いている。
美しい、と“タジマ”は立香にも聞こえない声で呟いた。
「……どうしてか、黙っていても、お前と一緒にいると気不味いどころか心地好いと思ってな」
立香の目が更に大きく見開いた。
「そうだったんですか」
「あぁ」
「私も、同じこと思ってました」
照れ臭いのか、少し笑うと目を逸らす。
「その、血とか、煙草の匂いとか普通だったら嫌だな、って思うのにす、タジマさんだとちっとも嫌じゃなくて、黙って歩いているのにどこか心地よくて、ほっとするんです。……おかしく、ないですよね」
「可笑しく無いとも」
血の臭いがしても逃げ出さないとは、剛胆だな。と、言わないのが大人である。優しい言葉と共に笑いかけた“タジマ”に安心したのか、また笑うと顔を赤くさせて俯いた。
「はてさて、今日は何回顔を赤くさせるのか」
「からかわないで下さい! こっちはタジマさんのせいで心臓がいくつあっても足りませんから!」
「それはすまん」
「もー、それ本気で言っていますかー」
膨れた頬をつつこうかつつかまいか悩んでいる内に、見慣れた家に着いてしまった。