「あの、庭の手入れも仕事に入るんでしょうか」
「いや、庭は業者に任せている」
玄関に入り、鍵を閉めてから振り返ると、立香はほっとした顔をしていた。きっと、庭の手入れのことで頭がいっぱいだったのだろう。
しかし、これで彼女はここから出られなくなった。
漸く、自分の家に招いたと言う実感が体の底から湧いてくる。征服感と言えば簡単ではあるが、独り占めしたいと言うのとは違う。例えるなら、自分の視界の中に幼子の子供を入れたい親の気持ちだろうか。親の心情を持つ恋人など、奇妙なものだ。
お邪魔します、と言いながら靴を揃えて上がる立香の真っ白な足から目を逸らし、思い付いたことを口にした。
「立香、お前が先に風呂に入るか」
「えっ、いや、タジマさんが先で良いですよ」
「嫌、お前は客だ。先に入ると良い」
自分も靴を脱いで上がり込むと、ひんやりとした床が足裏を擽る。無理矢理気味に立香が持っていたスクールバッグを持ち取れば、空いた両手をぶんぶんと振り回す。
「で、でも、タジマさんはこの家の主ですし」
「その家の主が良いって言うんだ。早く風呂に行け」
こっちは早くトイレに行きたい、など言える筈が無かった。