着替えを取ってくると言ったものの、タジマの家に女物の服は無かった。子供は全員男だったし、妻も亡くなってから遺品整理で処分した。あるのは最低限の夏服と冬服、下着類等と言ったもののみ。
「……む」
箪笥の引き出しを漁っていると、新品同然の白さを保ったままのセーターが目に入ってきた。暗めの色の間で一際目立つそれに、記憶の糸を手繰り寄せようとタジマは眉間に皺を寄せる。
「そう言えば、福袋の中にあったな……」
去年の正月、食材を買いに行ったデパートで偶然売れ残っていた福袋を見つけて買ったのだった。この白の縦セーター以外は己に合うものだったが、こればかりはどうしても似合わなかった。
取り出してみると、タジマの腰元よりも少し下辺りまで十分丈がある。これなら、もし下に着るズボンが無くてもしっかりと伸ばせばワンピース代りに出来そうだ。
これにするか、と一人呟いてタジマは白の縦セーターを片手に部屋を出た。
居間に行くと、既に立香の姿はない。二人きりになるのが気まずいのだろうか、遠くの方から湯船に湯を注ぐ音が聞こえる。
――もしや、先に風呂へ入っているのでは。
その考えが頭を過った瞬間、体が熱くなった。