もう若くは無いのだから、と頭を振っても体の熱は引けそうにもない。中心に熱があまり集まっていないのが唯一の救いだが、それもいつまでもつことか。
自分の家だと言うのに、タジマは自然と足音を消しながら廊下を歩いていった。角を曲がり、灯りの灯った洗面所を通り、ぼやけた引き戸を叩いた。引き戸の向こう側には、人影が立っている。どうやらまだ、湯は十分に溜まっていないらしい。
「あ、あの、その……」
不安が見え隠れする声は、冷や水のようにタジマの体を理性あるものに戻していった。
「一応、着替えとなりそうな服を持ってきた。近くに置いておくから、風呂から出たら着てくれ」
置こうとして視線を横に滑らすと、洗濯籠に無造作に入れられたブラジャーが目に入る。ベージュ色の質素なそれに、金色の目は縫い付けられたようにじっと見続ける。
理性が止める暇もなく、脳裏に顔を赤らめながら制服のシャツを脱いで下着を見せる立香の姿がありありと浮かび上がる。
ごくり、と皺に包まれた喉が鳴った。
「あ、あの」
「あぁ、すぐに出る」
「いえ、そうじゃなくて」
静かに引き戸が開いた。
「……入りませんか、一緒に」