宗矩さんは時々、お香を焚いてくれる。お香、と言っても江戸時代の大きなものではなくて現代の小さなものだけど。カルデアでは大きかったものなのにどうして? と前に訪ねたら、部屋中が臭くなる、と真顔で言うからどう返事したものか戸惑ってしまった。竹林を思い起こさせるさっぱりとした、心地よい香りを纏った着流しを着ている宗矩さんを見ると頭がくらくらして、体が火照ってしまう。きっと、私が男ならあそこも大きくして宗矩さんに襲い掛かるのかもしれない。
風呂上がりの宗矩さんも、香を纏う宗矩さんと同じぐらいに色気がある。寝巻きも夏が近づくと着流しの格好へと変わるのだが、熱くなったからなのか胸元をはだけて湯で少し赤くなった肌を見せるのは止めてほしい。まるで俺を抱いてくれと誘っているかのようで、自分が女なのが少し心苦しく思ってしまう。だから、今日は意を決して言ってみたけれど。
「……お前がそれを言うのか」
「へ?」
気がついた時にはリビングの床に押し倒されていた。
「私が毎日無念無想の心でお前を抱き過ぎないようにと気遣っているのを知っていて、わざと言ったのだろ? うん?」
だんなさま、おめめがこわいです。