結局、あれから昼寝はろくに出来なかったし、顔色が悪くなってたみたいで風呂と夕飯を済ますと宗矩さんに布団を準備されて、寝かされた。
「別に熱も無いし、大丈夫だよ。洗い物とかあるし」
「洗い物は私が片付けておく。今日は確りと寝て、明日への精気を蓄えておくのがよかろう。では、御免」
反論する隙も与えず、宗矩さんはそれだけ言うと、ぴしゃりと襖を閉めた。誰でもそうだが、特に宗矩さんのような人に真顔で淡々と言われるのは、普通に怒られることよりも100倍怖い。そもそも、宗矩さんは声を荒げるようなことはしない。正論による理詰めで相手を納得させるのだから、言われた相手としてはぐうの音も出ない。これでは一体、どっちがマスターか分からない。
「もし、私がまだマスターだとしたら、宗矩さんはサーヴァントとして付いて来ているだけなの?」
暗闇の中、閉ざされた襖に向かって尋ねてみても、襖は何も言わない。
「もしそうだとしても、今の私には何も出来ないのに、付いて来ているのはどうして?」
声が震えて、嗚咽が出そうになる。こんなに苦しいのに、悲しいのに、宗矩さんに直に聞く勇気は一欠片も起きなかった。