コロク
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「はい、お弁当。これが宗矩さんの分で、これがその食べたがってた……って、名前聞いてなかった」
「名なんぞ、お前は知らなくて良い」
 警備員の制服には。仕事先でもあるショッピングモール施設の方で着替えるらしい。けれど、私服だと落ち着かないらしく、平日の宗矩さんの服はワイシャツに薄茶色のジャケットと濃茶のパンツと、スーツのような落ち着いたファッションにしている。たまに、宗矩さんがいない昼時に洗濯してないワイシャツの匂いを吸いながら一人遊びしているのは秘密である。
「そう? じゃ、はい」
「ありがとう。では、行ってくる」
「いってらっしゃい」
 お見送りのキスをするとお互いに燃え上がってしまうので、いつも軽いハグで済ませるようにしている。けど、今日は嫉妬に駆られてしまうであろう大きな子供へのおまじないをしないと。
 私が抱き付くのを待っている宗矩さんの老眼鏡を外すと、唇に軽くキスを落とす。
「今日も頑張ってね」
「うむ」
 老眼鏡を掛けてあげると、そのまま出てしまった。でも、私は宗矩さんの福耳が赤くなっているのをちゃんと見ていた。

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「こっちに一如して」などと言っていたらドメインが取れることに気づいてしまったので作ったインスタンス