宗矩さんと武蔵ちゃんを観戦していた真上の部屋の窓にいる私を見上げた宗矩さんの表情は、冷徹そのものだ。一体、どうしたのだろう。バトルジャンキーだから、毎日のようにやって来る武蔵ちゃんと闘うことにとうとう嫌気が差したわけでもあるまい。とすると、武蔵ちゃんがさっき言っていた昨夜に何かあったのだろうか。
それよりも、まずは使用許可を下さねば。
「合点承知!」
と、令呪の刻まれていない右手を拳にして高く掲げれば、宗矩さんが頷いたのが見えた。
カルデアのマスターでもなくなった今、宗矩さんとのマスター契約も結んでいない。しかし、用心棒である宗矩さんが万全に戦えるように魔力の供給関係を個人的に契約している。霊体にも滋養ある素材を使用している閻魔亭の食事でも魔力は補えるけど、宝具の使用となるとそれだけでは賄えない。
つまり宝具使用許可は、宗矩さんとのあれやそれやを今日します宣言でもあるのだ。
「……」
「立香ちゃん、首まで真っ赤だけど大丈夫ー?」
「剣術無双・剣禅一如」
「美少年ハーレムがぁ~!」
空を越え、虚空を斬ったはずの剣士は、とんでもないことを良いながら斬撃で飛ばされていった。