カルデアに来る前、友達と度々訪れた事のある密室空間に私はいた。少し低めの机に色褪せたソファ、そして最新型のカラオケ機。炭酸の抜けたメロンソーダの隣には何故か急須と湯呑が置かれている。きっと、誰かが同行者に配慮したのだろう。
私はと言えば、こらまた少し古そうなドアの前に掲げられたプレートを同行者と一緒に見つめていた。
「……てまんからおけでいちどもいかずにきゅうじゅってんいじょうださないとでれないへや」
「ばいだびんち殿であるか……」
「道理でりゅうたんでも斬れない訳だ」
色褪せた赤茶色の壁には幾つもの刀傷が付いているものの、どれも壁を斬るには至らない。剣聖と呼ばれた宗矩さんでも無理となると、やはりこの指令に従うしかない。
「りゅうたん、その、手マンって知ってる?」
「いつもやっているものだろ」
「そ、そうだけど、その」
「恥ずかしいか?」
頷くと、何故か宗矩さんの口角が上がった。
「ならば、その前にもっと恥ずかしい事をすれば良い」
それは何の解決策にもなっていないのでは、と言おうとした唇は残念なことに塞がれてしまった。
#柳ぐだ