宗矩さんに抱き締められる自分の体を見下ろしながら、私はふと気になったことを口にした。
「ねぇ、宗矩さんは昔の私の方がいい?」
「どういうことだ」
「ほら、胸だって段々と前みたいに張りが無いし、お尻だって大きくなったし、それに……穴だって緩くなってるでしょ。10年前みたいなうぶな反応なんてもう演技でもしなきゃできないし」
「なるほど、今の立香よりも昔の立香を抱きたいと私が思っているかどうか聞きたいのだな」
首を縦に振ると、耳元から声がした。
「愚問だな」
吹き込まれる息が耳を愛撫するかのように流れていく。声から逃れようとしても、もう片方の耳に添えられた指が耳の縁をゆっくりと撫でて逃げられない。
「私はお前が何歳になろうと愛せる。それに、歳を重ねて老いていくのは私も同じだ。いつか、お前を抱きたいと思っても抱けないような体になるのやもしれん。だが、私は抱ける体である限り、立香、お前を抱く。……良いな?」
胸の奥が締め付けられ、目からは暖かいものが落ちてくる。後ろから抱き締められているのに、無性に宗矩さんが恋しくなる。譫言のように名前を呼ぶ度に、宗矩さんは返事をしてくれた。