段々と寒くなってきた朝は、起きるのが億劫だ。だけど朝食は私が作る、と宗矩さんに言ってしまったのだから起きなければなるまい。だが、今日はマシな方だ。なんてたって宗矩さんは休日なのである。週末に仕事が入った時は、いつも決まって月曜と火曜日が休みにしている。今日は月曜日だけど、慌てる必要はない。
目を開けて、寝転がったままうんと背伸びをしながら横を見ると、やはり宗矩さんは朝の鍛練でいなかった。ぽっかりと空いた空間にそのままローリングする。熱が引いたシーツに顔を沈めて思いっきり息を吸えば、香のような、それでいて素朴な宗矩さんの匂いがした。
「宗矩さん……」
すんすん、と吸い込む度にどうしてか愛おしさがお腹の底から込み上げてくる。お腹の奥が切なくなる感覚がするのは、多分、気のせいだろう。
匂いを吸うごとに重たくなる瞼にそのまま従いそうになるが、私にはやるべきことがある。
うんしょ、と起き上がる為に腕に力を込める。
「立香」
だが、背後からの声と共に私の体は再びベッドに沈んだ。
「朝から何とも可愛らしい事をしてくれる」
耳元から流し込まれたその声は、夜の香りを纏っていた。