非番だから、と言うわけではないが、目が覚めたら正午をゆうに過ぎていた。リビングから軽やかな妻の足音が聞こえる。朝は買い物に付き合ってね、と言われていたことを思い出したが、全く間に合っていない。
「もしもーし、おひるですよー、おきられますかー」
罪悪感を抱きつつ身を起こすよりも先に、かちゃりと開いたドアの向こうから少し小さめに呼び掛けられた。
「すまん……今起きた」
「おそようございます」
少しいたずらな調子の妻の声が、
「お昼は豚汁ですのでー」
と告げる。言葉通り、確かに汁物のいい匂いが漂ってきた。急に空腹感を感じはじめた現金な身体に勧められてなんとかベッドから起き出すと、もうすっかり食卓は設えられている。寝坊したことがますます気まずい。
「悪いな」
「その分午後はキリキリと働いてもらいますよ〜」
あれこれ要望を言いながら箸を並べて席に着こうとする妻の腕を引いた。朝の日課がまだ残っている。あ、と言う顔が振り返り、
「……遅いよ」
「うん」
甘く拗ねながらも首を傾げて上向く妻の柔らかな唇を食めば、ようやく頭がはっきりしてくる気がした。
#柳ぐだ