立香がカルデアから籍を抜いた、と言っても、その功績に変わりはない。ましてお供のサーヴァントが常時共にいるともなれば尋常ではない。更に、どういうわけかその界隈の名家達も、普段は人を人とも思わぬ争いを水面下で繰り広げているところをこの娘に対しては無条件無制限に保護している。
そんな娘が近くに来るともなれば、一目見て見たいと思うのが人の性というもので。
「おいしかったねー」
ふふ、と笑いながら立香がアパルトマンの階段を上がる。
「飯につられて会食を受けたのだから良かったじゃないか」
「あっ、私だけが食いしん坊みたいな言い方した〜」
階段でくるりと振り返って口を尖らせる立香を、ヒヤヒヤしながら但馬が見ていた。
「危ないぞ」
「私の愛しい愛しい夫が受け止めてくれるから大丈夫です♡」
そんなに酒は嗜んでいないように見えたが、空腹時に飲んだからか十分酔っ払っているらしい。
「ね、たじま?」
手すりにつかまってゆらゆら揺れながら、そうでしょう、呼びかける彼女を月明かりが照らし、すっかり成熟した女の美しさに但馬が見惚れる。
「……ああ」
思わず手を伸ばした。
#10年後 #柳ぐだ