「ただいま……いつの間に秋来たの……」
つい先日までの猛暑を予想しながら旅行から帰ってきてみれば、空気はすっかり秋めいていてむしろ凍えそうな心地だった。
「暦の上では上旬には立秋を過ぎていたがな。こうも冷えたのは今日からだ」
おかえり、と新聞を畳んだやぎゅさんが立ち上がる。
「羽織りものが要るか?俺のでよければそこにある」
「……借りますぅ〜」
薄物をどこにしまったかパッと思い出せなくて薄手のシャツをありがたく羽織らせてもらうことにした。少し煙たいあたり、不在中は悠々と一服していたのだろう。……別に止めてもいないのだけれど。
家主なんだからもっと勝手にしてくれていいのになあ、と思いながらやぎゅさんを見ると、しゅんしゅんとケトルが鳴っているのをじっと見つめていた。
「……お土産、甘いやつから行きますか?」
「ああ」
間髪入れずに返事が返ってくる。これは相当お土産期待値が高そうだぞ、と思いながら、私はお土産の詰まった紙袋から一番甘そうなお菓子を物色することにした。
#complicated.