「……美味い」
合格が出て内心ほっと胸をなでおろす。ありがとう駅のお土産コーナー。ありがとう呼び込みのお姉さん。
「チョコが濃いめで甘くて美味しいよね」
「かといって甘過ぎないから飲み物をうんと濃くする必要もなくていい」
そう呟いたやぎゅさんは齧っていた焼き菓子の残り半分を平らげると再び立ち上がった。戻ってくると手にはウイスキーの瓶とグラスがふたつ、マドラーがひとつ。
「俺は紅茶で割るが」
言いながらてきぱきと飲みかけだったアイスティーを氷ごとグラスに移してウイスキーを注いでいる。同じ琥珀色でも異なる色味がとろりと溶ける様子が綺麗で、
「……じゃあお土産話、聞いてもらいましょう」
「喜んで」
やぎゅさんからマドラーを受けとって同じように割る。作り終えた私のグラスに、
「……無事の帰宅に」
やぎゅさんがすかさずこつんと自分のそれを重ねる。
「……過ごしやすい夜に」
「ほんとにな」
私の返しに相槌を打って一口あおると、ほんの少しだけいそいそとしたそぶりで焼き菓子の包みを開けている。妙な可愛らしさに笑いをこらえながら、私ももう一つ手をつけることにした。
#complicated