稲妻は天使の剣、と誰かから聞いた。もう誰だか思い出せない。それほど昔のことなのだと思う。
強請られたわけでも攫ったわけでもなく、立香は自然に部屋に来るようになった。それでいて長々と居付くこともなく、週の始まりが見えてくると自宅へ帰っていく。息苦しさとは真逆のゆるやかな付かず離れずの関係は居心地よく、気づいたら誘うことが増えていたことを誰も責めることはできまい。
膝枕されたまま、嵐の窓辺をぼんやりと見つめたままの顔を見上げつつ様々の所業が知れることになったときのことを夢想する。謗られ罵られるだろうか、それとも何故だと泣かれるだろうか。きっとどちらでもないだろう、というのは、甘えだろうか。
ごろりと寝返りを打って腹に顔を埋めると、おそらく洗剤だろう良い香りがした。
「くすぐったいよ」
くすくすと笑う手が伸びてきて、明け方のように柔らかく撫でられる。
かの宗教の教えによると、いつか裁きの日が来るという。雷槌に打たれる時、この手を道連れに、とも思う。同時に、そのような末路はこの娘には似合わぬとも思う。このような迷いは初めてだった。
#immoral