「あ……?」
なろうと思ってなったわけでもないのに、という驚きと同時に身体が疼く。この疼きをリツカは知っていた。発情期のそれだった。けれど、あのときほど訳が分からなくならないし、誰でもいいという気持ちもなかった。そもそも今は発情期でもなんでもなくて、訳が分からない。
ただ、ヤギュウとしたかった。ぎゅうぎゅうに身体を押し付けあって、肌を寄せて、毛並みを繕いあいながらうんと気持ちよくなりたかった。
そのことをどこから説明したものか半ば呆然としながら考えるリツカをよそに、ヤギュウも姿を変える。
「リツカ」
優しく呼びかければびくりと小さな身体が跳ねた。
「やぎゅ……」
見上げてくる顔には、どうしたのか、どうすればいいのかわからない、と書いてあって、おもわず笑みがこぼれる。
「わたしは、お前のものだ」
もう一度、一つずつ言葉を噛みしめるように伝える。
「……うん」
向かい合った身体を組み敷いて、もう一度、
「お前のものだ」
耳元で囁くと、ぴくんとリツカの耳が跳ねた。本当に、心から喜んでそうなったのだと、尾で示してやる。
「やぎゅ、」
呼びかけるその声を目線で遮って、ヒトがするように唇を塞いだ。