「たったたららららら♪」
古い映画の雨の歌を口ずさみながら、夜の道をぶらぶら歩く。傘もさしてるし雨も降ってるけれど、念願の月間売上トップのお祝いの日だもの。悪い日のはずがなくて、ほろ酔いのまま通い慣れた道を歩く。駅前の商店街を抜けて、大学の前を通ってアパートが立ち並ぶ細道を抜ける。
ぶえっくしゅ、と盛大なくしゃみが聞こえた。
「……んん?」
とても近くなんだけど人気はなくてきょろきょろしていると、暗闇の中キラリと光る目と目があった。ねこだ!大きめ、コワモテ、きちんと座ってアパートの階段下で雨宿りしてる。
じいっと見つめると動かなくなる習性を利用してずずずっと近寄ると、一瞬びくりとしたものの逃げないでいてくれた。ちょっと濡れてはいるものの毛並みもいいし、どこかおうちからうっかり外に出ちゃった子かな?
「家出かーい?」
うりうり、とあごの下を撫でると、撫でさせてはくれるものの反応がない。うーん、野武士。
「こんな雨の中そんなくしゃみしてたら死んじゃうよ?」
今夜は雨足が強くなる予報だけれど、この子はもちろんそんなことは知らないと思う。心配が過ぎる。
「……うちくる?」