何の気なしに問いかけたのだけど、なん、と短く返事が返ってきて驚く。驚くけれど、それ以上にその佇まいに見惚れた。おりこうそうな顔つき、グレーがかった毛並み。金色の瞳と少し大きな耳がチャームポイントだった。かわいい、というよりなんかかっこいい。
うちのマンションはもちろんペット禁止だけど、一晩ぐらいバレない、バレない。
「よーし、じゃあだっこだ!」
腕を差し伸べるとするりと胸元に入ってくるあたり、ほんとに賢くて感心する。
そのしなやかな体つきを見ていて気がついた。尻尾が二つに裂けている。妖怪猫又じゃあるまいし、きっとどこかの悪い奴が傷つけたんだと思うと胸がぎゅっとなる。せめて今夜は盛大にもてなしてあげなければ。
しっかり胸元に抱っこして、ノンオイルのツナ缶があったはずの家へと急ぐことにした。
ほんとうにほんとうに賢い子で、タオルで拭いてあげる間もドライヤーを当てて乾かしてあげる間もじいっときちんと座っていた。怯えている様子もなくて、かといって全てを私に委ねている感じもしない。普段ネットとかでだれーんとしたりお茶目だったりするねこばかり目にしていたので、なんだかちょっと新鮮だった。