指で撫でるでもなくただ唇で触れられるくすぐったさ、そしてそれで募る愛しさを但馬は初めて知った。それを教える立香はといえばどこか決心したかのような少し硬い表情で、それでいてそっと優しく額や頬に唇を押し当ててくるものだからどうにも可笑しい。ついつい薄く目を開けてその様子を伺っていたが、 「但馬」 呼ばれ見つめ返すと、 「すごくやりにくいんですけど」 「位置どりか」 「そうじゃなくて、目、つむってて欲しい」 恥ずかしげに視線を落とす。それが当世流のやり方か、と頭の片隅に書き残しつつ、但馬はそっと目を閉じた。 一方望んだままに視線が外された立香は、ひとり頬を染めていた。元々もの静かな但馬が目を閉じると、その顔にはますます静謐さが増す。触れにくい何かがあるのに、それでいて求める心はますます強くなる。結局そのまま顔に唇を寄せ口付けるうちに、ただ愛しさが心に降り積もった。思わず頬を寄せるとまた但馬の目がぱちりと開く。 「ごめん。びっくりした?」 「いや」 再び見つめ合うが、今度はお互い何も言わなかった。言わないまま角度を探るように首を傾げ、瞳を閉じて唇を重ねる。 ここから先は、但馬が教える番だった。