ふるり、と。快楽の海から上がって最後と雫を落とすように立香が震えた。先程までともに沈んでいた但馬は既に落ち着いた顔をして横でその背を抱いている。立香が深く息を吐くと、二人の間の気だるさが増した。
体を重ねるようになって随分と経つ。慣れた分どうすれば互いに良い反応を返すか、どうすれば昂ぶるのか、なんとなく分かってきていた。深く打ち付けあった身体は芯まで蕩け、自分というものが何処かに行ってしまうこと、それでいてそのままただひたすら快楽に溺れることができると今では知っている。
十分に満たされ満たしたことに但馬は満足していたが、立香はどことなくむずがるように体を寄せてくる。
「不足であられたか」
もう一度できるだろうか、と危ぶみつつ背中から尻へと手を這わせると、立香はいやいやするように首を振った。
「但馬は、足りない?」
「いや」
質問に質問で返されたが足りていることは確かである。
「私も」
そう笑った顔は、しかし、満面の笑みではなく少し翳りがあった。そのまま、なんていうか、と言葉を探した立香は、
「クラクラするぐらい気持ちいいのは足りたんだけど、ね」
と呟いて、さらに悩見み続けている。