それからはもう、わあわあ泣いた。こんなに泣いた覚えがないっていうぐらい泣いた。柳生さんは黙って洗面からタオルを取ってきてくれたあたり、さっきの私の迷いもお見通しなのかもしれない。そうして、ひとしきり泣くとスッキリした。
「落ち着いたか」
落ち着きはしたけれど泣きすぎて頭がぼうっとする。とりあえず頷くと、
「もし、君が嫌じゃなければ、見舞いに付き合ってくれないか」
珍しく早いと思ったらお見舞いだったのか。言われて初めて、リビングのテーブルに花がおいてあることに気がついた。優しい、奥さんに似合いそうな花の色だ。
「行きます」
でもちょっとまぶたの腫れぼったいのが引いてから、と言ったら、柳生さんはちらりと時計を見てから、
「20時には職場に戻る」
「じゃあ大丈夫じゃ」
「今日ぐらい一緒に夕飯にしないか」
もらった抱きまくらが暖かい。ぎゅっと抱きしめて、
「はい」
返事をしたら、真顔の柳生さんの目がちょっと優しくなったような気がした。