優しい声に少しだけ人の上に立つものとしての声音が混ざった。こういうところが本当にずるい。私だって喜ばせてあげたいのに、そんな声で囁かれたらどうにでもされたくなる。
「いつものがスキ、だけど」
「うん?」
但馬が相槌と一緒に歩を進め始めたものだから、ぐらっとバランスを崩しそうになる。まさぐっていた手がすかさず支えてくれたおかげで転ぶことはなかった。
「いつも通りじゃなくてもいい、よ?」
「ほう」
そのままベッドまでゆっくりエスコートされる。私が端に腰掛けると、そのままゆっくり押し倒された。
「私も但馬にあげられるの、この身体ぐらいしかないから」
羽織の前を解く但馬を見上げると相変わらず微笑んでいたけれど、もうただの上機嫌といったものではなくて胸が高鳴る。つい、
「好きにして」
言ってしまった。明日多分きついんだろうことは分かっているけれど。私だって少しぐらい羽目を外したい。
羽織を脱ぎ捨てた但馬が袴を消した。着流しの帯を解こうと手を伸ばしたら捕らえられ、そのままシーツに押し付けられる。
「ならばそのように」
低く唸るようにそう言った但馬の手指が服の下に潜り込んでくるのは時間の問題だった。