ここまで但馬が酔っ払っているのは、本当に楽しかったということもあるのだろうけれど。
「マスターは、何かクリスマスに欲しいものとかはないのか」
月見の頃。盃片手に少しでも吹雪がやまないかじっと窓の外をみる荊軻が尋ねてきた。
「ほら、子どもらがそろそろそわそわし始める時期だろう?」
今からなら準備できるかもしれない、と言われ、うーんと考えてみたけれど、
「事件が起こらないといいなあ……」
「それは難しいな」
言った端から笑われた。
「あの賑やかな面子にそんなこと頼む方が理にかなわない」
「だよねえ」
そこにはあなたも含まれますが、と心の中で付け加えておく。
「……あの剣士とはうまく行っているのだな」
ひどく優しい口調でそう語りかけられてドキッとする。
「な、何なの急に」
「みんなマスターが可愛くて可愛くて仕方がないのさ。それでいて、ちゃんと主人として立って欲しいなんて思っているから誰も聞きやしない」
そうにんまりと笑って酒を注ぐ荊軻は、とても綺麗だった。
「皆あれは謹言居士な男だと思っていたからな。主人とくっつくだなんて誰も思っちゃいなかった」