どう、と言われても。あれやこれやが一瞬にして頭を駆け巡ってしまった。なにも、知らなかったのに。キスの仕方から帯の解き方、それからどう触れて触れられるのがいいのか。教えられたときの記憶と感触が勝手に蘇ってきて、
「……ばか」
やっとの事でそれだけ返すと、
「ああダメだ私の方が恥ずかしくなってきた」
「僕は全然聞き足りないな。どんなプレイがお好みか聞かせてもらえればお勧めもできるかもしれないしね」
また好きなことを言ってくれる。
「でも今赤い顔ができるぐらいにはちゃんと教えられているということか。やるなあ」
「アマデウス、下ネタは禁止でしょ……」
にこにこと無邪気に突き進もうとする偉大な作曲家の名前を呼んで咎めるとようやく黙った。分かってくれたのかとちょっとほっとした瞬間にガラス窓に映る人影がもうひとり増えたことに気づく。見慣れた、その体つきは。
「こりゃあいい。当事者が揃ったのだから素敵なひとときになりそうだね」
ならない!ぜんっぜんならない!
私が内心汗びっしょりになっているのを但馬は知ってか知らずか、
「斯様な場所で珍しい面子での酒盛りだな」
「一杯どうだ」
「頂こう」