悪戯っぽく問いを重ねたアマデウスを但馬は一瞬じっと見つめた後、
「左様」
澄ました顔のまま、口の端で微笑んだ。
「マスター、部屋まで送ろう。このままじゃあ顔から出た火で燃え尽きかねないって顔をしてる」
全く荊軻の言う通りだったから、素直に頷く。
「供は不要か」
「猫の皮かぶった送り狼は月が出ないか見張っててくれ。戻りついでに酒も持ってくるから好きなだけ飲んでいいぞ」
「僕は戻るよ。何か鳴らしたくなってきたからね」
こうして、但馬を一人残してマイルームに戻ることになった。まだ、ドキドキする。
「本当に、心底惚れ込んでるんだな。妬けるぞ」
「えっ」
荊軻がニヤリと笑った。
「冗談だよ。男女の仲を欲しているわけではないからな。ただ、それだけ想い想われているとあてられる」
「自重します」
「それはあれの役目だろう。無体を働かれていないか心配だ」
そんな風に見られているのか。私の前ではせいぜいちょっと戦いたい風だけれど、サーヴァントの中だとまた違うのかもしれない。
「……優しいよ?もっとわがままを言ってくれてもいいぐらいに」
「へぇ?物足りないのか?」