所在なさげにもがく指を捕えると、寄せられた眉根がふと緩んだ。見上げてくる瞳は潤みきって夜闇に光る。月が冴え、人肌の心地よい季節になっていた。
「……安らいだところ、相済まぬがーー」
もう僅かに奥へ下腹を押し付けると、ふ、とひとつ息をつきながらその身体を反らした。指を組み合わせた手のひらは暑く、ここだけが夏の湿り気を帯びたまま季節の移ろいを拒んでいる。
「ーーまだ足りぬ、と、ここが」
わざと嬲るような言葉を選び、もう数度押し付けてやると柔らかな肢体が乱れた。逸らされた顔の色は暗がりに溶けたままだが、ひくつく隠と握り返された指がかわりに饒舌になる。
「……離さぬ。安心召されよ」
望まれるままの言葉を与えても、更に背に回った足に掻き抱かれ、むずがるように解かれた指のかわりに腕を引かれる。
隙間など認めぬ、と。何よりも瞳の色にそう訴えられるがまま、内外構わず身を寄せる。再び漏らされた吐息は安堵と恍惚に満たされており、またそれに己の満ち満ちるのを感じた。