「もふる……撫でるだけではないということか?」
日本語が最先端過ぎたみたいでイケオジが尋ねてくる。
「撫でたり毛並みに顔を埋めたり、ですかね」
「ほう」
「もふるとか吸うとかって言います」
改めて説明するとちょっと気恥ずかしい。
「中身は俺だが」
「人は人、猫は猫ですっ。もともと猫だった人にはわかんないかも知れないけど、あの柔らかくて暖かくてかわいい生きものはめちゃくちゃ癒されるんですよ」
「癒されたいのか」
「衝撃的なことが続いたので」
そうか、と呟いたイケオジはしばし目を閉じると、
「猫のまま数時間、いても良ければ叶えよう。少々姿を変え過ぎた故、暫しの休息が必要でな」
そう言って真っ直ぐに見つめ返してくる瞳はあの子と同じ色をしている。私は首を縦に振った。この天気の中、猫を外に出すなんてことはしない。
「……触られたくないところはありますか?」
「いや。お主は触るのが上手い」
「あと」
「まだあるのか」
「お名前は?」
「……柳生だ」
そう言ったイケオジの姿が猫に変わって、てててと近づいてくる。
「苗字ぃ……?」
困惑した私の膝にちょいと手を出して引っ込める。最高にかわいかった。