カップ麺の標準的なできあがり時間は湯を入れて3分、だが。
「柳生君もう食べるの?」
「硬めが好きだ」
早々に箸を割ってしょうゆ味の麺を啜り始めた柳生にモリアーティーがすかさず絡む。
「硬すぎない?」
同じように湯を入れたうどんのカップを前に、暇を持て余しているのかよく喋る部下に頷きだけ返して黙々と食べている。
「君もカップ麺だなんて珍しいね」
アームチェアにかけてばかりではいられないこの部署に配属になってから、まともに昼を取るようになったホームズが助け舟を出した。
「啜るのには慣れたのかい?年なんだから誤嚥性肺炎が元で死ぬのなら案件を片付けてからにしてくれたまえ」
「班長ねえちょっと今の聞いた〜?」
「お前ほど食うのが不器用じゃない」
「あっヒドイ」
傷つくなあ、なんてぼやいたモリアーティーの携帯のアラームが鳴った。いそいそと蓋を剥がす男に、
「早すぎないか?」
「3分半にしたから大丈夫さ」
先ほどとは逆のやり取りをする。早々に一口入れるタイミングに、間に合わなかったのか間に合わせなかったのか。
「それは確か目安時間5分だぞ」
顔を曇らせたモリアーティーにホームズがむせた。