「おこたから出られない……」
子達に足を突っ込んだ立香がぼやくと、すかさず柳生が
「夕飯を作ればいいか?」
「それはがんばる」
柳生は料理が下手ではない。下手ではないのだが、だいたい豪快な一品になる。昼ならまだしも、夕飯にそれは危険を感じた立香がやや食い気味に宣言する。
「冷蔵庫けっこう空だったかな」
んしょ、っと掛け声をかけて抜け出すと寒い。爪先立ちで足踏みをしながら冷蔵庫を開ける。卵。キャベツ。もやし。焼きそば3玉パックの残り1玉。あとは冷凍庫にベーコン薄切りがいた。考えること数秒、
「やぎゅさーん」
「うん?」
「今夜はお好み焼きでーす」
宣言しながら立香は今見た材料を全部出す。
「買い出しに行かなくていいのか」
顔を出した柳生は既にマフラーを首に巻いていた。
「うわあ早い。ありがと、今日はあり合わせにさせてもらうから大丈夫」
「そうか」
マフラーを外そうとする夫の手と一緒に頭も引き寄せて頬に口付ける。
「ありがとね」
「……ああ」
こういう時の柳生が口付けを返すものの無表情なままだ。それがいつも面白くて、つい見つめてしまう立香であった。
#やぎゅうさんちのおうちごはん