12月に入った。起き出してきたところでパジャマ姿のままの立香に、もうすっかり出勤準備を整えた柳生が挨拶も早々に尋ねる。
「クリスマスは?」
「うちにいるよ」
「そうか」
柳生の妻が亡くなり、二人暮らしになってから毎年どこかでするやりとりだった。
「やぎゅさんは?捕り物?」
「今のところ大きいのはないがどうなるかは分からん」
「そっか」
去年、4年目にして初めてクリスマスに家族らしい食事を一緒にとった。と言ってもフライドチキンのかわりに立香のお手製鳥の唐揚げ、コースではなく定食といった趣ではあったが。言葉少なな夕食になったものの不思議と気まずくはなく、食後のお茶まで一緒にしてぽつぽつと語り合いほんの少し夜更かしまでした。
「また唐揚げにするから、冷めても美味しいしどっちでも大丈夫」
「そうか」
コートと手袋で防寒を整えた柳生が微笑む。
「あれは美味かった」
「うん。私も、あれ好き」
微笑み返して柳生を見送った。一瞬入ってくる外気が冷たい。
母の味は唐揚げ粉の味、とは柳生には言っていない。最初の年に柳生からプレゼントされた大きいぬいぐるみは、定位置のベッドで今も健在だった。