「……」
柳生が何も載っていない網を黙々と炙っている。
「なになにどしたの?」
「やはり初学のものはそうそううまくはいかぬな」
乾いたふきんで網をつまみ掲げると、わずかに餅がこびりついていた。
「洗うよりも焦がして炭にした方が早かろうかと」
「そうだね」
一足先に皿を片付けた立香がその隣にちょこんと座った。
「寒いか」
「ここならあったかいよ」
そう言った頬が少し赤いのはストーブの熱のせいか、それとも可愛いことを言った照れか。いずれにせよ、その娘が隣にいることに柳生は静かに微笑んで、再び網を炙る仕事に戻るのであった。
#柳ぐだ