初めてソファーで一眠りした、その次の週。
「今日は上で」
指で示したマスターの言う「上」は、マスターの住まいのことだった。いつも一階しか立ち入らないから知らなかったけれど、上の階は居住スペースになっていたのだ。
することは変わらないものの、やっぱり部屋に招かれるというのは緊張する。初めて訪ねた時、目に入ってしまった郵便物でマスターの名前を知った。ランニングシューズが玄関にあった。自炊する人なのか土鍋がある。お部屋にテレビがない。知らなかったことが、一度にいっぱい押し寄せて目が回りそうだった。
何より驚いたのが--
「……」
どういうわけか、ベッドで目を覚ますと抱きつかれているようになった。縋られてる、と言ってもいいかもしれない。胸元か、時にはお腹のあたりにマスターの頭がきていることもある。ゆるく巻きついた腕は温かく、顔は見えないものの寝息は安らいだゆっくりしたもので、夜の間はあれだけ翻弄してくるのに不意の可愛らしさがずるくて困ってしまう。
そんなわけで--起こさないようにそっとその白いものの多い髪を撫でるのは、私の密かな楽しみになっているのだ。
#immoral #柳ぐだ