落穂ナム
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やぎゅさんがくたびれ果てた顔をして、ようやく帰ってきた。ソファーにどっかと腰を下ろし、目をぎゅっと瞑ったまま深い深いため息をついている。同じぐらい深い眉間の皺に、
「え、と、おっぱい揉む?」
気を紛らわせようと冗談めかして言ってみた。いつもと比べてだいぶん生気のない片目がぱちりと開いてじいっとこちらを見つめてくる。何か言ってもらわないと馬鹿みたいでいたたまれないんだけどなあ……。
と。やぎゅさんの手がぽすぽすとソファの隣を叩いた。誘われるまま、腰掛けつつ一応やぎゅさんの方を向いてみる。
「……揉まん」
ぼそっと言うなり押し倒してきたやぎゅさんの顔が胸元に埋まった。そちらの方がお好みでしたか。ぐいぐい顔を押し付けて来るのがちょっと猫っぽくもあり、少しだけ眉間の皺も浅くなったような気がして、なんだか可愛い。
「お疲れ様」
囁いて白い髪を撫で付けると、ちらりと見上げてきた瞳は少し潤んでいるものの、まだ色めいたことには染まっていないようだった。とりあえず生き返らせたし、妻の仕事としては合格、だよね?

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「こっちに一如して」などと言っていたらドメインが取れることに気づいてしまったので作ったインスタンス