なんだかんだと文句を言っていたのを無視して家に連れ帰った。顔色は悪く、舌鋒にもキレがない。おおよそ昼の現場を引きずっているのだと見当がついた。折角踏み込み過ぎず鈍過ぎない逸材だというのに、こんなところで折れられるのは困る。
これが男であれば女でも買ってこいの一言で済む。一夜の夢、人肌のぬくもりというものは馬鹿にならず、大抵の男はそれで立ち直る。
だが藤丸は女だった。男を買って買えないことはないだろうが、そういう文化はないように思えた。
食欲がないと言う口に粥を流し込み、風呂に入れと言うと目を白黒させた。
「参りきった顔をしているのに自分で気づいてないのか?今日は泊まっていけ」
言ってやると、悄然として風呂に向かう。そこで言い返さないあたり、堪えているという自覚はあるのだろう。貸したジャージを着て戻ってきた藤丸に温めた酒を飲ませてようやく、
「……随分と至れり尽くせりなんですね」
憎まれ口を叩くようになった。
「お前が男なら女でも買ってこいと言うところだがな」
考えていたことをそのまま言ってやると、
「わたしが女だから尽くしてくださったんですか?」
意外にも、藤丸は悪戯に笑ってみせた。