落穂ナム
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「それだけ口がきけるのならもう大丈夫そうだな」
柳生警部は薄く笑って、俺も風呂、とこたつから出ていった。
一人取り残された私は、あの人にも善人らしいところがあったのだ、ということに感動していた。それこそ、昼の惨状が記憶から一気に拭われるほどに。
裏で何かやっていそうな、仄暗さは確かにある人だ。打算である可能性も捨てきれない。けれど、それはそれでその程度には使えると見込まれたと思えた。さすが大ベテランなだけあって私では到底代わりになれない人であり、そんな人に目をかけられていたということは大きな自信になる。

「おい。寝るなら布団で寝ろ」
揺さぶられてうたた寝していたことに気づく。おふとん、と呟くと、
「シーツは変えた」
と言われたあたり、普段の警部の寝床なのだろう。
「警部はどこで」
我ながら眠そうな声で聞いてみたものの、いいから移動しろと急かされて導かれるまま布団に転がる。すこし冷たかったけれど、足元に仕込まれた湯たんぽが気持ちよかった。
「電気を消すぞ」
声をかけられて、
「警部」
「なんだ」
どこで寝るんですか、と聞いても答えなさそうだな、と思った。
「一緒に寝ないんですか」

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「こっちに一如して」などと言っていたらドメインが取れることに気づいてしまったので作ったインスタンス