そう思った途端、てしってしっと足元を叩かれる。見ると猫やぎゅさんがこちらを見上げていて執拗に主張していた。
「わっ、ちょっ、爪立てちゃダメだよ……!」
ストッキングに引っかかっている感触がして本気で慌てる。安くないんだからね……!という言葉をぐっと飲み込むと、
「はは、その子には退屈だったか」
獣医さんが笑った。
「すみません……えっと、この子……」
猫やぎゅさんのせいでいろいろ頭から飛んでしまった。ええい。
とりあえずストッキングが大惨事になる前にやぎゅさんを抱っこして回収しつつ、
「い、遺伝子異常があるみたいで……シーズンになると逆に外に出なくなるんです……」
思い切って適当言ったけどだいぶん無理があった。抱っこして大人しくなったやぎゅさんの顔を見られない。もうあとは勢いで乗り切るしかない。
「叔父が拾った時には尻尾もこうで、多分、よくないブリーダーさんが捨てちゃったんだね、って……」
どこで誰が見てるかわからないから、柳生さんが叔父さん設定を使わせてもらいつつ畳み掛ける。
獣医さんは静かに聞いていたけれど、
「……なるほどね」
頷いてしゅるんとやぎゅさんの尻尾を撫でた。