「おすすめ、と」
「うん。どれが美味しかった?」
アマゾネス・ドットコム、スイーツコーナー入口。通りがかった但馬守をすかさず呼び止めた立香は掲示されたメニューを指差しつつそんなことを尋ねていた。
今年もチョコレートの季節が近づいてきている。但馬守ならなんだって恭しく受け取ってくれるのはわかってはいるものの、リサーチしてちょっとでも好みのものを渡したいと思うのは乙女心というものだろう。
但馬守はふむ、と一呼吸置いてから、今日のメニューを一つずつなぞっていく。
「今日出ているものであれば、杏仁豆腐の生姜シロップがけ、これは中国の甘味で体を潤し温める食材が使われているという。配達中は風にさらされ乾燥、冷え込むが故の一品と聞いた。それから猫娘印の猫の手パンケーキ、こちらは定番であるが故ご存知だろう。あの上品な甘みと柔らかさは健在である。主に腹は減ったが塩気は飽きたという者に人気と聞いた。こちらのばくらゔぁなる珍しい菓子は甘い生地の間に豆類が挟まったもので--」
違う、そうじゃない。立香はそう言いたくなるのをぐっとこらえつつ耳を傾けるのであった。