落穂ナム
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やぎゅはとてもいい。そばに行ったら構ってくれるし、行かなかったらヒトの姿になってごはんだけ用意してくれる。他のオスみたいに押さえつけたりうっとうしかったりしない。こういうの、たぶん、ヒトがいう『スキ』、なんだとおもう。
やぎゅもわたしのこと、『スキ』かな、って聞いてみると、とてもとても変なかおをしてだまってしまった。
やぎゅはわたしのこと『スキ』じゃない?そう思うとくるしくなった。なにか重いものがからだにのっかったみたいに息ができない。
「やぎゅ、なんかくるしい」
言ってるうちに痛くもないのになみだが出た。痛くない?ほんとう?
やぎゅはますます変な顔をした後、なぜか笑ってわたしの顔やからだを繕ってくれる。
「やぎゅ?」
「好きでもなければこうも優しくなどしてやらん」
つまりやぎゅも『スキ』ってこと?『スキ』ならやさしくするのか。まだぺろぺろと繕ってくれるやぎゅに聞いてみる。
「やぎゅ、どうしたらうれしい?」
「……いつも通りでいい」
「えー」
『スキ』ってむずかしい。けれど、やぎゅがやさしくしてくれたから、くるしいのはどこかへいってしまった。

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「こっちに一如して」などと言っていたらドメインが取れることに気づいてしまったので作ったインスタンス