ふ、と薄く吐息を漏らした男の顔を、貫かれ蕩けたまま立香が見上げる。どろどろと下腹を溶かすような熱が先程までの激しさを潜めただそこに留まり、額に頬に唇と掌が触れる。それはひどく優しく、尚更静かになった熱が強く感じられた。
こういう時、但馬はあまり口を開かない。開からないながらもひどく饒舌になる。頬に添えられた手は緩く髪を梳き始め、まぶたや鼻先を啄まれくすぐったい。一方でもう片方の手は立香の手を捉えて敷布に押し付けたままだし、時折腰から緩くかき混ぜるのも忘れてはいない。
ぶらぶらと揺さぶられるに任せていた脚がなんとなく寂しく、立香が但馬の脚をなぞる。すぐにこめかみをなぞる唇が、耳に文字通り牙を剥いた。かと思えば、
「立香」
その声こそ酩酊といった甘さでその名を呼んで、声をあげたその吐息のまま立香も呼び返す。
「たじま」
互いの名、それ以上の言葉をふたりともに知らないように飽きず囁きあえばまた熱が溢れてくる。浮かされるまま言葉を忘れ唇を塞ぎ、再び溶けゆくままになった。