やはり、と言うべきだろうか。こちらを挑むように見つめてくる藤丸は勘が良かった。踏み込んでこないのは、刺しておいた釘が効いているのか。
「質問があれば受ける」
餌をまいてみる。すぐに、
「わざと刺させたんですか」
と尋ねられた。見た目に違わぬ青さを知れて愉快な気持ちになる。
「聞いてどうする」
返事をしたところで時間切れになった。朝から雲行きの怪しかった空からぽつりぽつりと雨が降り始め、アスファルトを濃い色に塗りつぶし始める。向こう側で現場検証を行ってはいるがもとよりそう調べる気がないはずで、案の定撤収の指示を出しているようだった。
「あなたも--」
そこまで言った藤丸が唇を噛んで言葉を飲み込んだ。きっとあなたもクロなんですか、とか、そういうことを尋ねようとしたのだろう。
「濡れ鼠にならんうちに車に戻るぞ」
問い切らなかったことに免じて話を変えてやる。事実、雨雲は低く垂れ込め激しい降りになりそうだった。藤丸は返事をせず、どうすればいいかわからない、といった顔で着いてくる。
と、
「楽しいですか」
ぽつりと問われて、自分が笑っていたらしいことに初めて気づいた。
「--さあな」